【2022年版】オーストラリアのお勧めビール 15選!
海外旅行へ出かけ現地の美味いもので一杯、なんて最高ですよね。
オーストラリアと言えばワインが有名ですが、実はひとり当たりのビール消費量が日本の約2倍もあるビール大国でもあります。
街中にも至るところにパブがあり昼夜を問わずビール好きの笑い声に溢れています。
今回はそんなオーストラリアのビールについて徹底解剖してみましょう。
- オーストラリアのビール消費量
- 酒屋でのビールの買い方
- サイズ別ビールグラスの呼び方
- 各州を代表する大手メーカーの有名ブランドたち
- クイーンズランド州代表 XXXX Gold(フォーエックス・ゴールド)
- ヴィクトリア州代表 Victoria Bitter(ヴィクトリア・ビター)
- ニューサウスウェールズ州代表 Tooheys New(トゥーイーズ・ニュー)
- タスマニア州代表 Cascade Premium Light(カスケード・プレミアム・ライト)
- サウスオーストラリア州代表 Coopers Original Pale Ale(クーパーズ・オリジナル・ペール・エール)
- Crown Lager(クラウン・ラガー)
- Little Creatures Pale Ale(リトル・クリーチャーズ・ペール・エール)
- James Squire 150 Lashes Pale Ale(ジェームス・スクワイア・150・ラッシーズ・ペール・エール)
- Carlton Draught(カールトン・ドラフト)
- Great Northern Original(グレート・ノーザン・オリジナル)
- James Boag’s Premium Lager(ジェームス・ボーグス・プレミアム・ラガー)
- Pure Blonde Ultra Low Carb Lager(ピュア・ブロンド・ウルトラ・ロウ・カーブ・ラガー)
- Hahn Super Dry (ハーン・スーパー・ドライ)
- 番外編 Foster’s Lager(フォスターズ・ラガー)
- Hemingway’s Brewery Pitchfork Betty’s Pale Ale(ヘミングウェイ・ブリュワリー・ピッチフォーク・ベティーズ・ペール・エール)
- Sauce Brewing Co.(ソース・ブリューイング・カンパニー)
- ビールの種別(スタイル)
オーストラリアのビール消費量
キリンホールディングスが世界各国のビール協会などに実施したアンケート調査の結果、2018年のビール総消費量で日本は7位でした。
対するオーストラリアは23位。
2018年当時の日本の人口は1億2421万8千人。
対するオーストラリアは2489万8千人。実に五分の一にしか及びません。
しかし一人当たりのビール消費量に換算すると日本は40.2ℓ(大瓶63.4本分)で世界第52位。
対するオーストラリアはなんと76.3ℓ(大瓶120.5本分)で世界18位。
ヨーロッパ諸国には及びませんが、それでもオージーたちがいかにビール好きか分かりますね。
データ:キリンホールディングス
酒屋でのビールの買い方
オーストラリアでは酒屋はbottle shop(ボトルショップ)と呼ばれます。
酒屋ではビールは、缶ビール、瓶ビールとして売られています。
通常、cans=缶ビールの容量は375mlとなっています。
日本のような750mlの缶ビールはあまり見かけません。
瓶ビールはbottles(ボトル)と呼ばれますが、特に小瓶のビールのことをstubby(スタビ―)という愛称で呼びます。
スタビ―は直訳すると短いとかチビっ子という意味になります。
スタビ―の内容量には銘柄で差があり、330mlから375mlほどとなります。
大瓶を出している銘柄もありますが、こちらは種類が少なくあまり一般的ではありません。
ちなみに大瓶の内容量は750mlとなっています。
オーストラリアの瓶ビールのほとんどが栓抜き不要のスクリューキャップとなっています。
サイズ別ビールグラスの呼び方
ビールサーバーから注がれるキンキンに冷えた生ビール。格別ですよね。
日本では「ナマ中」のように大、中、小でジョッキのサイズを指定しますが、オーストラリアではグラスごとに呼び名が違います。
そしてこの呼び方は州や都市によって違いがあります。
今回はシドニー、キャンベラ、メルボルン、ブリスベン、パース、ホバート、ダーウィンなど都市部で共通している呼び名をご紹介します。
(アデレードを含む南オーストラリア州では呼び名が変わりますのでご注意ください)
まず普通サイズのグラス。
日本では小さめ中ジョッキに当たるサイズがschooner(スクーナー)です。
容量は約425mlとなります。
次に大きいのが日本の大きめの中ジョッキに当たるpint(パイント)です。
こちらは約570mlとなります。
これより大きなサイズとなるとjug(ジャグ)と呼ばれるピッチャー型のものとなります。
こちらは何人かでシェアする前提となりますので、「グラスはいくつ必要?」と聞かれます。
ちなみにジャグの容量は1140mlとなり、日本の大ジョッキより大きくなります。
ここまでが一般的なサイズです。
しかしブリュワリーやクラフトビール工場へ行くとスクーナーより小さなサイズも目にします。
スクーナーよりひとつ小さいサイズのグラスはmiddy(ミディ)と呼ばれます。
容量は285mlとなりますので日本の小ジョッキくらいですね。
またクラフトビール工場へ行くといわゆる「飲み比べセット」としていくつかのビールを一度に楽しめるセットがあります。
これに使われる一口サイズのグラスはpony size(ボニーサイズ)と呼ばれることが多いようです。
こちらは140mlとなっています。
注文する際、英語では「Can I have a pint of XXXX Gold(銘柄), please?」などという言い回しになります。
各州を代表する大手メーカーの有名ブランドたち
オーストラリアには大手ビールメーカーの有名ブランドから、地ビールとして地域限定あるいは単体のブリュワリーで製造、そして酒店で販売されるクラフトビールまで無数の銘柄が存在します。
日本と比べて気温の高いオーストラリアのビールは全般的に飲み口がさっぱりしていて苦みが少ないのが特徴です。
これは暑い時にグビッと一気に飲み干せるためです。
オーストラリアでは「ライトビール」「フルボディビール」「プレミアムビール」とアルコール度数と製法によってカテゴリー分けがされています。
ライトビールはアルコール度数3.5%前後、フルボディビールはアルコール度数4.2~4.5%前後、プレミアムビールはアルコール度数4.8~5.0%前後です。
まずはどこのレストランのメニューにも登場するような大手ビールメーカーの人気銘柄からご紹介していきましょう。
クイーンズランド州代表 XXXX Gold(フォーエックス・ゴールド)
ランチの御供やアルコールが強くない方、ビールがそれほど得意でない方向けとしてお勧めしたいのがこのフォーエックス・ゴールドです。
フォーエックスゴールドはアルコール度数3.5%のライトビールでラガー(オーストラリア・ラガー)スタイルになります。
喉ごしが爽やかで苦みが少ないのが特徴です。
ビール好きの方にはちょっと物足りなく感じられるかもしれませんが、夏場の観光で歩き疲れた時などにググっと一気に飲み干すにはちょうど良い軽さかと思います。
もう少しパンチが効いているほうが好みという方には、オリジナルのXXXX Bitter(フォーエックス・ビター)の方をお勧めします。
こちらもやはりラガーになりますが、フルボディビールでアルコール度数4.4%となっています。
XXXX(フォーエックス)というブランドはもともとCastlemaine Breweryキャッスルマイン・ブリュワリーとして1878年に誕生しました。
ニコラスとエドワードのフィッツジェラルド兄弟の、最高に美味いエールを作るという夢が原点です。
現在のXXXXという4つのエックスのブランド名の由来は当時の格付け方法にあります。
当ブリュワリーの最初の商品は「XXXスパークリング・エール」というビールでした。
人気商品ではありましたが、完璧な味わいではありませんでした。
完璧になるのに欠けていたもうひとつの要素=Xを見つけた1893年に、最高のエールのレシピは完成しXXXXフォーエックスとなりました。
フォーエックスの看板商品は1924年に生まれたフォーエックス・ビターです。
しかし1991年に生まれたフォーエックス・ゴールドがクイーンズランド州を飛び出しオーストラリア全国で一番売れたビールになるのにそれほど時間は掛かりませんでした。
ちなみに同年よりフォーエックスはラグビーのクイーンズランド選抜チーム、クイーンズランド・マルーンズのスポンサーを続けています。
尚、XXXXフォーエックスは現在、キリンホールディングス傘下のライオン社のブランドとなっています。
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ヴィクトリア州代表 Victoria Bitter(ヴィクトリア・ビター)
フルボディビールでXXXXビターと並ぶ代表格と言えばこのヴィクトリア・ビターです。
アルコール度数は4.9%と高めで、オーストラリアのビールの中では比較的苦みが強いほうです。
日本のビールと比べると苦みが少なく感じてしまいますが、これはオーストラリアのビールに共通するマイルドなフルーティさによるものかと思われます。
オーストラリア国内では略して「VB(ヴィービー)」という愛称で親しまれています。
XXXX フォーエックスと並びオーストラリア全国区のビールです。
ヴィクトリア・ビターの始まりは、1842年にわずか19歳でスコットランドからヴィクトリア州へ移住してきたトーマス・アイトケンというひとりの青年によるものでした。
彼は1851年に最初のブリュワリーを設立。
その後、1854年にイースト・メルボルン地区のヴィクトリア・パレード通りでさらに新しいブリュワリーを始めます。
この年、このブリュワリーで初めてのヴィクトリア・ビターが誕生しました。
ヴィクトリア・パレード・ブリュワリーと名付けられたこのビール工場は成長を続け、1862年にはビールを運ぶために16頭の馬を保有するまでになりました。
その後、1884年にトーマス氏は亡くなり、事業は息子であるアーチボールド氏へ引き継がれます。
当時、このブリュワリーは最も大きく最も恰好言いブリュワリーのひとつと評されていました。
また現在、スタビ―と呼ばれる瓶ビールの中でヴィクトリア・ビターの瓶の形状だけが首の短い「ショートネック型」というこだわりのある形になっています。
これは当時、倒れにくい瓶、混入される空気の量を極力少なくする瓶、を求めて考え出された形状です。
ヴィクトリア・ビターは現在、カールトン&ユナイテッド・ブリュワリーズ社のブランドとなっています。
ニューサウスウェールズ州代表 Tooheys New(トゥーイーズ・ニュー)
フルボディビールでありながらキレがあって爽やかな飲み口のこのトゥーイーズ・ニューは万人受けするタイプのビールです。
アルコール度数は4.6%とやや高めで、種別はオーストラリア・ラガーとなっています。
ディナーの際の、「まず一杯目はビールで」なんていう時におススメしたいビールです。
前菜のサラダやスープの味を邪魔しない、控えめな苦みが特徴です。
トゥーイーズはジョンとジェームスのトゥーイーズ兄弟が1860年代にシドニー旧市街、ダーリングハーバーでジュース工場を買い取ったところから始まります。
最初に生まれたのは「トゥーイーズ・ブラックエール」というビールで、これは現在も「トゥーイーズ・オールド・ダーク・エール」という名で残っている銘柄です。
事業が大きくなり、1875年にはサリーヒルズ地区のスタンダード・ブリュワリーに拠点を移します。
ここで1931年に新たに製造されたラガービール、「トゥーイーズ・ニュー・スペシャル」が現在のトゥーイーズ・ニューとなります。
このトゥーイーズ・ニューの大ヒットにより1970年代に現在の強大なビール工場を建設するに至りました。
ビールのカロリーが心配な方には、「トゥーイーズ・エクストラ・ドライ」の方をお勧めします。
こちらはアルコール度数4.4%のフルボディビールですが、通常のビールよりカロリーで25%オフ、炭水化物も30%カットとなっています。
トゥーイーズも現在、キリンホールディングス傘下のライオン社のブランドとなっています。
タスマニア州代表 Cascade Premium Light(カスケード・プレミアム・ライト)
ライトビールとして先述のフォーエックス・ゴールドと人気、売り上げ実績を二分するのがこのカスケード・プレミアム・ライトです。
ラガータイプのビールで、アルコール度数は2.4%ととても低く抑えられています。
これだけ軽いと味わいが心配になるところですが、実はカスケード・プレミアム・ライトの人気の秘密はその味にあります。
ホップの特徴であるスパイシーさとフルーティさを残しつつほのかに香るハニーのような甘さがまるでフルボディビールのような深みのある味わいを作り出しています。
またそのお値段がお手頃な価格に設定されているのも人気を後押ししています。
カスケード・ブリュワリーは1824年にタスマニア州サウス・ホバートに作られました。
これは現在まで続くオーストラリア最古のブリュワリーです。
1824年、イングランドから東インド会社を退職したヒュー・マッキントッシュ氏とその義理の兄弟であるピーター・デグレイブ氏が移住してきます。
二人は共同経営者となりホバートにカスケード地所を作り、ビール醸造と製材所を始めます。
しかし1826年、デグレイブ氏はイングランドにあった借金のため収監され、1832年まで塀の中で過ごすことになります。
1832年の釈放後、彼はビール醸造部門をマッキントッシュ氏から引き継ぎます。
1834年にマッキントッシュ氏が亡くなり、1840年にその息子、ウイリアム・マッキントッシュ氏も亡くなると製材所も引き継ぐことになります。
当時、オーストラリア、特にヴィクトリア州はゴールドラッシュに沸いており、ビールと製材をヴィクトリア州へ出荷することで事業は大きな成功を収めました。
その後、カスケード・ブリュワリーはカールトン&ユナイテッド・ブリュワリーズ社の傘下に入ります。
カールトン&ユナイテッド・ブリュワリーズ社はその後、ベルギーに本社を置く世界的酒類メーカー、アンハイザー・ブッシュ・インベブ社の100%子会社となります。
さらに2020年6月、日本のアサヒグループ・ホールディングスがカールトン&ユナイテッド・ブリュワリーズ社をアンハイザー・ブッシュ・インベブ社より買収しました。
よって現在、カスケードはアサヒグループ・ホールディングス傘下のカールトン&ユナイテッド・ブリュワリーズ社のブランドとなっています。
ちなみにカスケードのラベルに描かれている動物はタスマニア島の固有種、タスマニア・タイガー(日本名フクロオオカミ)です。
もともとはオーストラリア大陸全体に生息していましたが人間やディンゴに追われ、タスマニア島だけに生き残りました。
しかしその後も家畜を襲う害獣として駆除され続けたため1936年に絶滅してしまいました。
タスマニアのシンボルとしてカスケードのラベルには未だにその姿が描かれています。
サウスオーストラリア州代表 Coopers Original Pale Ale(クーパーズ・オリジナル・ペール・エール)
口当たりは良いけどしっかりしたフルボディタイプのビールを飲みたい、という方には緑のラベルのペール・エールタイプ、このクーパーズ・オリジナル・ペール・エールがおススメです。
ペール・エール特有のフルーティな味わいと華やかな香りがありつつ、アルコール度数は4.5%と決して軽くはありません。
苦みが抑えられているので普段はビールが苦手、という方にも飲みやすいかと思います。
もう少しパンチの効いた苦みのあるビールがお好きという方には赤いラベルのクーパーズ・スパークリング・エールがおススメです。
その名を有名たらしめているのが「クラウディ(曇り空)」と評される不透明なビールです。
濁り酒ならぬ沈殿物のある濁りビールで、モルトとホップの豊かな味わいがあり、且つアルコール度数は5.8%と強めになっています。
クーパーズ・オリジナル・ペール・エールの生みの親、トーマス・クーパー氏が初めてビールを醸造したのは1862年のことでした。
彼はアデレードの郊外、ノーウッドの自宅で醸造を開始します。
彼の家に代々伝えられていたこのビールのレシピは好評を得て、ブリュワリーは成功への道を歩き始めます。
1897年、トーマス氏は亡くなりますが、そのレシピは「Thomas Coopers & Sons」というブリュワリー名と共に4人の息子へ引き継がれます。
その後、不況や戦争、買収の危機に瀕しながら現在まで6世代、150年間、ブリュワリーとレシピは守り続けられています。
国際酒類メーカーに組み込まれることなく、現在ではクーパーズ・ブリュワリーはオーストラリア最大のオーストラリア資本ブリュワリーとなりました。
クーパーズ愛飲家の中には「Australian made, Australian owned」のスピリッツを応援したいという熱いオージーたちもたくさんいます。
ここまで各州を代表するおススメビールたちをご紹介してきましたが、ここからはその他の有名ブランド、変わり種などをご紹介していきましょう。
Crown Lager(クラウン・ラガー)
クラウン・ラガーはプレミアムビールを代表する人気銘柄です。
アルコール度数は4.9%とやや高めです。
その歴史はなぞに包まれた部分がありますが、カールトン&ユナイテッド・ブリュワリーズ社によると1919年より醸造されたフォスターズ・クラウン・ラガーがその元になっています。
当時は一般には販売されておらず、海外からの来賓しか口にすることができなかったとされています。
1954年のエリザベス女王の来豪を機に名称を「クラウン・ラガー」へ改め、一般に販売されるようになりました。
但し、1954年よりも前に一般に流通していたという説もあり、真相は謎に包まれています。
そのスマートなボトルの形状とシャンパンゴールドのラベルがスタイリッシュな雰囲気を創り上げています。
Little Creatures Pale Ale(リトル・クリーチャーズ・ペール・エール)
まだ登場していなかった西オーストラリア州の代表ビール、それがこのリトル・クリーチャーズ・ペール・エールです。
実はリトル・クリーチャーズは元々、クラフトビール、いわゆる地ビールでした。
オーストラリア全土に流通するようになったのはここ一年くらいの話です。
このビールは「クラッシック・アメリカン・ペール・エール」というスタイルで醸造されています。
フルーティな味わいは柑橘類やネクタリンを連想させますが、アルコール度数は5.2%としっかりしたフルボディビールとなっています。
リトル・クリーチャーズはもともとマチルダ・ベイ・ブリューイング・カンパニーで働いていたハワード、ニック、フィルの3人の青年の「最高に美味いペール・エールを」という情熱からスタートします。
アメリカでビール開発に携わった醸造家・フィル・セクストンの経験を活かすべくマーケティング専門家・ハワード・シャーンズ、レストラン専門家・ニック・トリンボリが共同でアメリカンスタイルのペール・エールの開発を始めます。
着想から3年の月日を経て、リトル・クリーチャーズ・ペール・エールが完成したのは2000年のことでした。
リトル・クリーチャーズ・ブリュワリーは今もパース郊外の港町・フリーマントルでブリュワリー兼レストランとして高い人気を集めています。
リトル・クリーチャーズも現在、キリンホールディングス傘下のライオン社のブランドとなっています。
James Squire 150 Lashes Pale Ale(ジェームス・スクワイア・150・ラッシーズ・ペール・エール)
豪州最古のクラフトビール(地ビール)の復刻版ともいえるのがこのジェームス・スクワイア・150・ラッシーズです。
パッションフルーツやグレープフルーツを思わせるフルーティな香りのペール・エールタイプで、アルコール度数は4.2%となっています。
華やかな香りとは裏腹にこのビールの誕生の裏には壮大なストーリーが隠されています。
150 ラッシーズとは実は「150回のムチ打ち刑」のこと。
ジェームス・スクワイア氏は1787年に英国からニューサウスウェールズへ流刑に処せられた最初の囚人団のひとりでした。
ジェームスは1754年に英国の貧しい家庭に生まれました。
彼にとって盗みを働くことは生き抜くことと同義でした。
盗みと逮捕を繰り返しついに30歳の時に未開の地、オーストラリアへの島流しの刑を宣告されます。
こうして豪州ニューサウスウェールズのポート・ジャクソンへ流れ着いてからわずか一年。
流刑に懲りることなく今度はさらに薬局で盗みを働き逮捕されます。
盗んだのはコショウ、そしてホアハウンドと呼ばれるホップの味を真似たハーブでした。
実はオーストラリアへ流れ着いてからすぐにジェームスはビールの醸造を始めていたのです。
ジェームスのビールはすでに英国の警官たちにも人気となっていました。
そこで1789年、死刑を宣告される代わりに5ポンドの罰金と300回のムチ打ち刑を言い渡されます。
しかもビールを作ることができるなら、さらに150回のムチ打ちとエールビール2樽に減刑しても良いという手心も加えられました。
無事にビール2樽を納め1795年に晴れて自由の身になったジェームスは30エーカーから農場を始めます。
1805年にはオーストラリアで初めてのホップの栽培に成功します。
翌1806年にはそれをフィリップ・キング知事に献上し、知事より褒美に牛を一頭を授かりました。
こうしてジェームスがオーストラリアで最初のホップ生産者として公式に認めらることになりました。
この時、すでに農地は1000エーカーにまでなっていました。
1806年、ジェームスはパラマッタ川のキッシング・ポイントにモルティング・ショベル・タバーンという酒場を開きます。
船旅で喉を乾かせた乗客たちにジェームスのビールは大好評でした。
順調に成功を重ねたジェームスはついに盗人から地区巡査まで上り詰めます。
さらに貧しい人たちを助ける慈善家になり、1822年に67歳で他界した際にはこの植民地で最大の葬儀が執り行われるほどになりました。
現在のジェームス・スクワイアのビールはライオン社が1999年に始めたモルト・シャベル・ブリュワリーで醸造されたものです。
ジェームス・スクワイア氏の波乱万丈の人生と、150回のムチ打ちと引き換えに誕生しオーストラリアで最初に販売されたビールの栄誉を讃えて復刻されたものです。
今では「150(ワン・フィフティー)」の愛称で親しまれています。
Carlton Draught(カールトン・ドラフト)
実はヴィクトリア州代表で先述のヴィクトリア・ビターと並ぶ人気銘柄がこのカールトン・ドラフトです。
ペール・ラガーと呼ばれるスタイルでアルコール度数は4.6%となっています。
今やオーストラリアを代表するビール大手となったカールトン&ユナイテッド・ブリュワリーズ社。
その始まりは醸造経験もないエドワード・レイシャムというひとりの実業家が1864年に醸造場を買い取ったところから始まります。
エドワードは醸造担当にアルフレッド・テリーというひとりの天才を雇い入れます。
アルフレッドは輸入物のヨーロッパの重いビールとは違い、オーストラリアの暑い気候の中ですっと喉へ流れ込んでいくような飲みやすいタイプのビールを作り出します。
この軽さが好評を得て、町中のパブへ出荷されることになります。
これがカールトン・ドラフトの誕生です。
その後、1907年にカールトンはフォスター、ヴィクトリア、シャムロック、キャッスルマイン、マクラッケンらのブリュワリーと共にソサエティ・オブ・メルボルン・ブリュワリーズというカルテルを結成します。
これが後のカールトン&ユナイテッド・ブリュワリーズとなりました。
Great Northern Original(グレート・ノーザン・オリジナル)
飲み口の軽いビールが暑いオーストラリアに多い中で、さらに苦みを抑えてクリーンで弾けるようなキレを求めたのがこのグレート・ノーザン・オリジナルです。
フルーティな香りのラガータイプとなっており、アルコール度数は4.2%となっています。
ケアンズの酷暑の中でも究極のリフレッシュメントとなる飲み口を追及しています。
1930年代、メルボルンでビールを醸造していたカールトン&ユナイテッド・ブリュワリーズ社は北部クイーンズランド地域にもビールを出荷していました。
しかし乱暴な港湾労働者や鉄道労働者によってビール樽に穴を開けられ、中身のビールを盗まれるという被害に悩んでいました。
そこでケアンズで運営に苦しんでいたグレート・ノーザン・ブリュワリーを買収。
グループの一員へ迎え入れることになりました。
グレート・ノーザンのラインナップにはオーストラリアでは珍しいノンアルコールビールのグレート・ノーザン・ゼロという銘柄もあります。
James Boag’s Premium Lager(ジェームス・ボーグス・プレミアム・ラガー)
タスマニアはランセストンの澄んだ軟水とピルスナー・モルトを使ったヨーロピアンスタイルのラガーがこのジェームス・ボーグス・プレミアム・ラガーです。
通常のオーストラリアのビールより低温で熟成させ、成熟するまでゆっくり時間を掛けているのが特徴です。
口に含んだ時のフルーティな香りと後からやってくるキレのあるドライな後味はシーフードとの相性が格別だと言われています。
アルコール度数は4.6%となっています。
ジェームス・ボーグ一世は奥さんと一緒に1853年にスコットランドからヴィクトリア州へ移住してきました。
3か月後にはタスマニアに移っています。
1883年にジェームス・ボーグ一世と息子の二世で買い取ったエスク・ブリュワリーがボーグス・ブリュワリーの前身です。
この年にジェームス・ボーグス・XXXエールという名作が生まれています。
ジェームス・ボーグス&サンズと名付けられたブリュワリーは二世、三世と代々、引き継がれていきます。
そして1994年にヒット商品、ジェームス・ボーグス・プレミアム・ラガーが生まれます。
2000年にスペインのサン・ミゲル・コーポレーションの傘下に入ったブリュワリーはボーグス・ブリュワリーとなります。
ジェームス・ボーグスも現在、キリンホールディングス傘下のライオン社のブランドとなっています。
Pure Blonde Ultra Low Carb Lager(ピュア・ブロンド・ウルトラ・ロウ・カーブ・ラガー)
ビール好きの皆さんの中には男女を問わず、太ってしまうのではと気になって思い切りビールジョッキを傾けられない、という方も多いのではないでしょうか。
今でこそ日本でもカロリーオフや糖質ゼロのビールは当たり前のように見かけるようになりました。
オーストラリアでも健康志向のビールはたくさん見かけるようになりましたが、そのブームを切り開いたのは、ピュア・ブロンド・プレミアム・ラガーというたったひとつのビールの成功でした。
2004年にこの健康志向というまったく新しいコンセプトを持って生まれたこのビールはオーストラリアのビール業界をひっくり返しました。
2015年にマイナーチェンジが施され生まれたこのピュア・ブロンド・ウルトラ・ロウ・カーブ・ラガーは実に80%もカーブ=炭水化物成分をカットしながらアルコール度数は4.2%とフルボディ。
キレがあり喉ごし爽やかなラガータイプとなっており、女性を中心にオーストラリアでは人気の銘柄となっています。
ピュア・ブロンドはカールトン&ユナイテッド・ブリュワリーズ社のブランドです。
Hahn Super Dry (ハーン・スーパー・ドライ)
先述のピュア・ブロンドに負けず劣らず健康志向なのがこのハーン・スーパー・ドライです。
実に99.9%糖質カットとなっており、炭水化物成分はわずか0.7%しか含まれていません。
それでいてアルコール度数4.6%の辛口となっています。
1987年に創業したハーン・ブリュワリーはチャールズ・ハーン博士により買収されたシドニー郊外キャンパーダウンの古びた工場が出発点でした。
ハーン・プレミアム、ハーン・プレミアム・ライトとプレミアムシリーズを世に出しますが、1990年代に人気が低迷します。
ブリュワリーはシドニースタイルと呼ばれる健康を意識したビールの醸造へ方向転換を図り、2006年にこのハーン・スーパー・ドライのヒットが生まれます。
ハーン博士は今も現役で新たなビールの開発を続けています。
番外編 Foster’s Lager(フォスターズ・ラガー)
ここまで登場したビールたちの顔ぶれを見てあれ?と思われた方も多いはず。
日本を含む多くの国でオーストラリアのビールと言えば?と聞いて最初に出てくるのがこのフォスターズ・ラガーだと思います。
フォスターズ・ブリュワリーは1886年にウィリアムとラルフというアメリカ人のフォスター兄弟によってメルボルンに設立されます。
1900年代にはオーストラリア全土に流通するような人気ブランドとなります。
1907年にはヴィクトリア、シャムロック、キャッスルマイン、マクラッケンらのブリュワリーと共にソサエティ・オブ・メルボルン・ブリュワリーズというカルテルを結成。
カールトン&ユナイテッド・ブリュワリーズ社となった同社の中でフォスターズ・ラガーはプレミアムビールと位置づけられました。
しかしその後、カールトンブランドの人気と反比例するようにフォスターズの生産量は落ち込んでいきます。
1970年代になり徐々にイギリスやアメリカへ輸出され始めると流れが変わります。
スポーツイベントにも積極的にスポンサーを行うようになり、フォスターズの知名度は高まっていきます。
1980年代にイギリスにフォスターズ・ラガーの醸造所が建てられたのを皮切りに世界中のビールメーカーにライセンスを供与します。
今ではEU圏、アメリカ、カナダ、インドなど多くの国でライセンス生産されている為、オーストラリアを代表するビールと言われることも少なくありません。
しかしオーストラリア国内では輸出用ビールと見られることが多く、人気は決して高くありません。
大手の酒類チェーン店などでもフォスターズを置いていないことのほうが多いのが実情です。
ではおいしくないのかというとそんなことはありません。
炭酸がしっかり効いていて苦みが強めな味わいは日本人の好みに近いので、チャンスがあればぜひお試しください。
オーストラリアは今、空前のクラフトビール(地ビール)ブームで、都市部にはいくつものクラフトビールのビアホールがあります。
さらにそんなブリュワリーやビアホールを飛び出して、ボトルショップチェーン店の店頭に並ぶ銘柄もまた無数にあります。
そんなクラフトビールから今回は、クイーンズランド州ケアンズ郊外のポートダグラス生まれのクラフトビールをひとつご紹介します。
Hemingway’s Brewery Pitchfork Betty’s Pale Ale(ヘミングウェイ・ブリュワリー・ピッチフォーク・ベティーズ・ペール・エール)
ヘミングウェイ・ブリュワリーはポートダグラスの地でスタートしました。
現在はケアンズの客船ターミナルにも大きなブリュワリー兼ビアホールを構えています。
そのビアホールから人気の6銘柄を「フラッグシップ・シリーズ」としてボトルショップで販売しています。
それぞれラガー、ピルスナー、トロピカル・エール、ウェストコーストIPA、ペール・エール、XPAと異なるスタイルのビールが出ており、中でもこのライトブルーの缶のペール・エールタイプが人気となっています。
キャラメルのような甘みとパンチのある苦み、そしてトロピカルフルーツを思わせる香りが特徴で、アルコール度数は5.1%のミディアムボディとなっています。
ここでもうひとつ。
ケアンズ最新のブリュワリーをご紹介しておきましょう。
Sauce Brewing Co.(ソース・ブリューイング・カンパニー)
クイーンズランド州ケアンズの街の中心地レイクストリートにこの10月にオープンしたばかりのブリュワリー、それがこのソース・ブリューイング・カンパニーです。
元はシドニー郊外のマリックビルという場所にバーとブリュワリーを開いており、今回、満を持してケアンズへ進出したというわけです。
ビールとサイダー併せて常時、10種類以上の銘柄をサーバーに備えており、気になる銘柄は無料で試飲もさせてくれます。
またテイスティングセットもあり、あれこれと飲み比べながらいろいろなビールを楽しむこともできます。
ビールの種別(スタイル)
ビールを選ぶ際、飲んだこともないビールはその味を想像することが難しいですよね。
ブリュワリーなどでビールの種類が多ければ多いほど悩んでしまうものです。
そこで簡単にスタイルごとの特徴を見てみましょう。
Lager(ラガー)
麦芽と下面発酵のビール酵母を使い、低温でゆっくり時間を掛けて下面発酵で熟成させたビールです。
ドイツのバイエルン地方が発祥で、冬の間に洞窟に貯蔵し発酵させて作ったことから「貯蔵」を意味するドイツ語、ラガーの名が付いています。
苦みにキレがあり、マイルドな味わいが特徴です。
Ale(エール)
先述のラガーとは逆に、大麦麦芽と上面発酵のビール酵母を常温で短時間で上面発酵させて作られるのがこのエールです。
エールの多くはホップを使い苦みと香りを出しています。
ホップはビールを腐敗から守り良い状態で保存するのにも役立っています。
深いコクとフルーティな味わいが特徴です。
Stout(スタウト)
一番、色の濃いスタイルで黒ビールとも呼ばれるのがこのスタウトです。
ローストした大麦を上面発酵させるため香りに香ばしさがあります。
主にヨーロッパなど寒い地方で人気のビールです。
そのためオーストラリアではあまり多くのスタウトは見かけることはありません。
スタウトはアイルランドのギネスビールの創業者、アーサー・ギネス氏によって1778年に考案されました。
当時は麦芽に税金が課せられていたので、麦芽化されていない大麦をローストして原材料にしたと言われています。
コーヒーやキャラメル、あるいはチョコレートのような香りがあります。
また味にスムーズさ、甘さを出すため、別の原料を混ぜて風味を出すこともあります。
アイリッシュスタウト、ミルクスタウト、オートミールスタウト、オイスタースタウトなどが有名です。
Pilsner(ピルスナー)
ピルスナーは下面発酵のラガーの一種です。
色が淡く、ホップの爽やかな苦みとフローラルな香りが特徴です。
日本のビールの多くはこのピルスナーに分類されます。
世界で最も飲まれているのもこのピルスナーです。
チェコ共和国がその発祥の地です。
Pale Ale(ペール・エール)
オーストラリアで一番人気があるのがこのペール・エールというスタイルです。
pale(=淡い)色合いが特徴ですが、味や香りは千差万別です。
ホップを使うためフルーティな味わいのものが多く、鼻に抜ける香りは柑橘系を連想させるものが多いようです。
またアルコール度数も比較的高めです。
シーフード、中でもフィッシュ&チップスなど揚げ物とよく合うとされています。
IPA(アイ・ピー・エー)
IPAとはIndia Pale Aleの略でその昔、英国がインドへ輸出していたペール・エール・スタイルのビールが元になっています。
輸送の際の腐敗を防ぐためホップの比重が大きくなっています。
ホップが強いためトロピカルフルーツや柑橘系、あるいは桃に似た香りが特徴です。
また苦みも比較的強いため飲み応えのあるビールスタイルになっています。
その出自の通り、スパイスの効いたインド料理に合うとされています。
Double IPA(ダブル・アイ・ピー・エー)
Dopplebockドッペルボックというドイツのアルコール度数の高いラガーの製法をIPAに応用したのがこのダブルIPAです。
強いトロピカルまたは柑橘系のホップの香りと際立つ苦みが特徴で、アルコール度数も7.5%またはそれ以上となっています。
ビール上級者に人気のスタイルで香りの強いチーズやスパイシーなサラミによく合うとされています。
Amber Ale(アンバー・エール)
アンバーモルトという琥珀色の麦芽を使ったエールがこのアンバー・エールです。
アメリカ発祥のスタイルです。
ホップが強すぎず、モルトが重すぎず、というバランスの取れたビールです。
キャラメルのような甘さのある香りがあり、ベリー系やメロンのようなほのかな甘みがあります。
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