【2024年度版】オーストラリアの植物
オーストラリアの植物は、未だに名前の付いていないものが半数以上あると言われるほど、謎に満ちています。
世界最古の大陸オーストラリアには、多くの固有種の植物が茂り、熱帯雨林や亜熱帯雨林を形成し、乾燥帯や砂漠地帯でも逞しく生きる仲間が見られます。
そんな不思議なオーストラリアの植物について、オーストラリア在住のスタッフがご紹介していきます!
オーストラリアの気候区と植物の分布について
オーストラリアは、大陸1つが1つの国という広大な島国であるため、様々な気候区を有しています。
この気候区の差異がオーストラリアの植物の分布に大きな影響を与えています。
雨量の多い場所では、降雨林が形成されますが、オーストラリアには緯度に応じて熱帯雨林、亜熱帯雨林、温帯雨林、冷温帯雨林があります。
熱帯雨林は、クイーンズランド州北部のケアンズの周辺で、年間の降水量は4,000mmを超えるエリアもあり、この一帯では多くのシダ植物や裸子植物など原始的な植物が見られます。
亜熱帯雨林は、ゴールドコーストから近いラミントン国立公園やスプリングブルック国立公園などが当該地域となり、この辺りではイチジクの原種や着生植物、コケ類が多く見られます。
温帯雨林は、ニューサウスウェールズ州とビクトリア州の州境付近で、各種パインなどが茂っています。
冷温帯雨林という言葉は聞き馴染みがないかと思いますが、それは南半球でこの雨林が認められているのが3箇所のみとなっているからです。その3箇所とは、オーストラリアのタスマニア島南西部と、ニュージーランド南島のフィヨルドランド地域、アルゼンチンの西パタゴニアです。南緯40度を超えるこれらの場所では、荒れる海域がもたらす強風と南極大陸で発生する嵐が混ざり合い、激しい偏西風となって年間に3,000mmほどの雨を降らせます。オーストラリアのタスマニア島では、そんな厳しい環境下でも生き続ける独特の進化を遂げた植物が見られます。
そして、オーストラリアの内陸部の殆どは乾燥帯の砂漠気候になっていますが、水の少ない環境で逞しく生きる植物が見られます。
また、オーストラリアの北西部キンバリー地区では、かつてゴンドワナ大陸としてオーストラリア大陸が他の大陸と繋がっていたことを示唆する植物が見られます。
それでは、この多種多様なオーストラリアの植物についてフォーカスして行きたいと思います。
オーストラリア全域で見られる植物
オーストラリアの植物について、先ずは比較的オーストラリア全域で見られる植物をご紹介いたします。
ユーカリ
ユーカリは、およそ6,000万年前に登場したと考えられるオーストラリア原産の植物です。
当初は2、3種類しか無かったものが、乾燥に適応して分布を広め、現在では約600種類以上になり、オーストラリアの樹木の4分の3を占めるほどになりました。
乾燥に強く、長い根を伸ばして地下水脈を探り当て、下を向いている葉が夜露を根元に落とし水を送ります。栄養分の少ない土壌でも育ち、火に強い植物です。
幹は非常に硬くて燃えにくく、樹皮が焦げても再び若芽が出てきます。その樹皮には油分が多く含まれており、自然発火することもあります。燃えて死んでもタネが弾け、若葉が生えて再び成長をしていくファイヤーと共に増える植物です。
この油分は抽出されて、アロマオイルや健康食品に利用されています。
コアラが餌として食べる植物としても有名ですが、実際にコアラが好んで食べるユーカリは10種類程度となっています。
チーク
チークは、線路の枕木に使われることで有名な木です。
油分を多く含んでおり、水に強いので、家具や建築材として使用されています。
原産は東南アジアとされますが、オーストラリアにも広く分布しています。
4月頃には褐色の小さな花を付けます。
オースラリアでは、チークはマホガニーと並ぶ高級材木としてホームセンターなどで売られていますが、大変高価になっています。
バンクシア
バンクシアは、オーストラリアの固有種とされている植物で、オーストラリアの極度乾燥帯を除くほぼ全域に分布しています。
非常に硬い殻に覆われた実を付ける独特の植物で、この殻は山火事によって摂氏400度の高温に熱せられないと弾けない作りになっています。
殻が弾けた後は発芽に必要な雨を待ち、充分な水分を得ると初めて地面に落ちて発芽がする植物です。
バンクシアは、黄色や桃色、オレンジ色の花を咲かし、このバンクシアの殻はギフトショップなどでアロマグッズとして人気があります。
熱帯雨林で見られる植物
次に、熱帯雨林性気候区に多い植物をご紹介します。
熱帯雨林ではファーンと名の付く植物が多く登場しますが、ファーン(Fern)とは「シダ」のことです。
原始的な古い形態の植物が多くなっています。
ツリーファーン
ツリーファーンは、熱帯雨林の中で見られる植物で、雪の結晶のように開いた美しい葉が特徴です。
特に、世界最古の熱帯雨林で有名なケアンズ近郊の湿潤地帯で多く見られます。この世界遺産の森の植物は、1億3,000万年前の植物であると言われますが、このツリーファーンは1億5,000万年前から姿形を変えていない、まさに地球上で最古のシダ植物ということになります。
恐竜が恐竜時代に貪っていた植物が、現代に堂々と今でも茂っているということになります。
キングファーン
キングファーンは、別名ジャイアントファーンとも呼ばれる世界最大のシダで、葉の大きさは最大で6mにもなります。
1億年以上前からほとんど形態を変えていない地球上で最古のシダ植物のひとつと考えられています。
エレクトリックファーン
エレクトリックファーンは、東海岸の雨林の中に広く生息するシダで、湿地を好みます。
光の当たる角度によって、葉の色が緑いろから青色などに変化して、チカチカして見えることからエレクトリックファーンという名前が付きました。
光って見えることから興味を示した動物を誘き寄せ、胞子を遠くへ運ばせることに成功しています。
亜熱帯雨林や温帯雨林で見られる植物
亜熱帯雨林や温帯雨林には、他の大陸でも一般的な植物が見られますが、ここでは、オーストラリアならではの植物をご紹介したいと思います。
イチジク科の植物
イチジク科の植物は、オーストラリアでは蔓性や木性などの原種に近いイチジクが40種類ほど確認されています。
シメコロシイチジクと名が付く寄生植物も多く、植物の世界でも、厳しい弱肉強食の競争が行われています。
ケアンズ山間部の熱帯雨林や高原地帯、ゴールドコーストの亜熱帯雨林に広く分布しています。
パイン各種
オーストラリアには様々なパインが分布しています。
フープパインは、枝の末端にボンボンのような葉を付ける独特の形状をしています。
東海岸に分布しており、雨の少ない森でも元気に育ちます。
カウリパインは、大変長生きをすることで有名なパインで、ケアンズ近郊のキュランダでは樹齢300年以上の巨木をご覧いただくことが出来ます。
カウリパインは3分の2ほどの高さまで枝がなく、真っ直ぐ伸びる幹は建築材や家具材に重宝されています。
着生植物各種
着生植物とは、シダ植物の中で、他の植物に場所を借りて生活をしている仲間のことを言います。
一方で、寄生植物と呼ばれる仲間がありますが、これは元木から養分を吸い取って、やがて枯らしてしまう植物のことを指します。
着生植物は、着生した木から養分を吸い取ることはせず、葉を広げ落葉を受け止めて自ら養分を作り出します。
空気中の水蒸気から水分を取るため、湿気の多い熱帯雨林に広く分布しています。
冷温帯雨林で見られる植物
冷温帯雨林は、オーストラリアではタスマニア島南西部がその気候区となります。
大自然のタスマニア島から固有種をご紹介いたします。
パンダーニ
パンダーニは、タスマニア島の固有種でヒースの一種とされています。
タスマニア島の湿地地帯で見掛ける植物で、高さまたは長さが12mほどに成長します。
枝は無く、1.5mにもなる長い葉を幹から直接伸ばして樹先に冠を作り、下には枯れた葉を垂らして幹を覆います。
11月から1月頃に、赤やピンク色の花を咲かせます。
キンバリー地区で見られる植物
オーストラリア北西部キンバリー地区で見られる植物は、独特の形態のものが多くなっています。
アクセスが困難なエリアで、学術的な調査もまだまだ充分ではないため、未だ名前の付いていない植物が多く残っています。
バオバブ
バオバブは、アフリカ大陸や、イエメンのソコトラ島で有名な植物ですが、オーストラリアでは北西部のキンバリー地区で見られます。
独特の形状の植物で、原産はアフリカ大陸であると言われていることから、かつてオーストラリア大陸はアフリカ大陸と地続きであった証拠とされています。
幹は巨大な貯水タンクになっています。
葉が少ないのですが、樹皮の下にも葉緑体があって、光合成を行うことが出来るという不思議な植物で、この構造により、長い乾季を落葉しつつも乗り切ることが出来ると考えられています。
西オーストラリア州の州都パースのキングスパークに観賞用のバオバブの木が植えられています。
乾燥帯で見られる植物
エアーズロックやキングスキャニオン方面のオーストラリアの内陸地帯は、一年中ほとんど雨の降らない砂漠気候になっています。
この植物にはとても厳しい環境の中でも、逞しく根を張っている仲間があります。
デザートオーク
デザートオークは、砂漠地帯に育つ木です。
オーストラリアでは内陸の砂漠地帯、特にエアーズロックやキングスキャニオンの近くで見られ、非常に成長が早く、乾燥に強い植物です。
針葉樹のように見える葉は、細かい葉が鱗のように繋がったもので、水分が不足すると木の葉を落として水の蒸発を防いでいます。
スピニフェックス
スピニフェックスは、オーストラリア内陸の砂漠地帯に分布する植物です。
外見は針の山のような形をしていて、硬く尖った棘のような葉は水分の蒸発を防ぐため、葉を細く巻いた作りになっています。
数年に一度のまとまった雨が降ると、数週間後に花を咲かせて穂を付け、深く張った根は、砂漠地帯の砂の飛散を防ぐ役割があります。
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