オーストラリアにおける新型コロナウイルス・ワクチン接種の体験レポート
徹底的な水際対策を施すことにより、事実上の新型コロナウイルス・ゼロ戦略を取るオーストラリアですが、2021年7月に入りシドニーのあるニューサウスウェールズ州では、国際線乗務員の送迎を担当する運転手の新型コロナウイルス感染に端を発したデルタ株の拡散による感染が拡大、その広がりは隣州のビクトリア州まで影響を及ぼし、ここに来て再度ロックダウン等の厳しい措置が取られ、経済活動の停滞を招くと共に、市民生活に暗い影を及ぼしております。
この新型コロナウイルスのパンデミックからの離脱はワクチン接種による集団免疫獲得しか無いと考えられている中、ここオーストラリアはワクチン接種では世界的に大きな遅れを取っておりましたが、2021年7月オーストラリア連邦政府よりファイザー製ワクチンの供給増加の見込みが発表され、ワクチン接種のスピードアップに大きな期待が寄せられています。
そのような状況下のオーストラリアで、オーストラリア・ゴールドコースト在住の現地スタッフが実際に新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた体験レポートと共に、オーストラリアの現在の感染状況やワクチン接種の現在地をレポートします。
オーストラリアの現在の感染状況(2021年7月16日現在)
市中感染者(過去7日間) | 帰国者感染者(過去7日間) | 現在感染者 | 累計感染者 | |
---|---|---|---|---|
オーストラリア全体 | 551 | 54 | 979 | 31,516 |
オーストラリア首都特別区 | 0 | 0 | 0 | 124 |
ニューサウスウェールズ州 | 534 | 20 | 875 | 6,618 |
ノーザンテリトリー準州 | 2 | 2 | 7 | 190 |
クイーンズランド州 | 4 | 15 | 47 | 1,752 |
南オーストラリア州 | 0 | 9 | 16 | 825 |
タスマニア州 | 0 | 0 | 0 | 234 |
ビクトリア州 | 11 | 5 | 26 | 20,737 |
西オーストラリア州 | 0 | 0 | 8 | 1,036 |
2021年6月上旬の段階においては、ここオーストラリアでの市中感染の発生は限定的となっており、新規感染者のほとんどは海外からの帰国者となっておりましたが、2021年5月下旬にはビクトリア州において海外帰国者隔離ホテルからのウイルス漏洩による市中感染、6月中旬にはニューサウスウェールズ州において国際線乗務員の送迎を担当したドライバーに端を発した市中感染が発生し、7月中旬現在、市中感染の拡大に歯止めがかからない状況、予断を許さない状況となっております。
特にニューサウスウェールズ州のシドニー近郊で発生した市中感染は、インド由来の感染力の強いデルタ株の蔓延とされ、ニューサウスウェールズ州ではロックダウンを含む厳しい新型コロナウイルス対策が取られており、6月26日に始まったロックダウン措置は、現時点で7月30日までの延長が決定しております。
このニューサウスウェールズ州に端を発したデルタ株の拡散ですが、隣州メルボルンのあるビクトリア州にも広がりを見せ始めております。これはシドニーからメルボルンへ荷物を運んでいた運送業者ドライバーがデルタ株に感染しており、そのウイルスをメルボルンに持ち込んだことに端を発し、ビクトリア州では過去24時間内で10名の市中感染が発生、これによりビクトリア州では7月15日深夜より5日間のロックダウン措置が取られるに至っております。
オーストラリアのワクチン接種進行状況(2021年7月16日現在)
所管地 | 過去24時間ワクチン接種回数 | ワクチン合計接種回数 |
連邦政府 | 97,218 | 5,451,180 |
オーストラリア首都特別区 | 1,430 | 105,644 |
ニューサウスウェールズ州 | 18,165 | 1,112,596 |
ノーザンテリトリー準州 | 1,364 | 74,850 |
クイーンズランド州 | 14,657 | 740,272 |
南オーストラリア州 | 5,648 | 300,065 |
タスマニア州 | 1,304 | 135,589 |
ビクトリア州 | 15,437 | 1,328,544 |
西オーストラリア州 | 7,439 | 383,067 |
総合計 | 162,662 | 9,631,807 |
ワクチン接種回数は全豪で未だ約960万回に留まり、2回の接種を完了した数は全人口の約9%強に留まっております。
当初オーストラリア連邦政府が発表していた接種予測と比較すると、そのワクチン接種回数には大きな遅延が発生しておりますが、その要因としてワクチン到着・供給の遅延、アストラゼネカ製ワクチンの血栓問題等の諸要因が上げられ、特にアストラゼネカ製ワクチンの血栓問題(注)はオーストラリアでは大きな問題となっております。
アストラゼネカ製ワクチンのワクチン接種後、血栓症を発症したというケースがヨーロッパ諸国で広まり、ヨーロッパ数カ国において同社ワクチンの接種を中止するなどの報道が続き、オーストラリアでもメルボルンの男性がアストラゼネカ製ワクチンの接種後、血栓症を発症、集中治療室での治療を受ける事態が発生。
このため、オーストラリア連邦政府は、2021年4月8日「50歳未満の国民はファイザー製ワクチンの接種を推奨する」との発表を行うに至りました。
アストラゼネカ社製新型コロナウイルスワクチンに関する報道発表
ただし、アストラゼネカ製ワクチンのワクチン接種後、血栓症を発症するというケースは非常に稀であり、ワクチンとの正確な因果関係が解明されておらず、アストラゼネカ製ワクチンを全面的に禁止することはない旨も併せて発表される。
2021年6月17日には、ワクチン接種に関するオーストラリア技術諮問グループであるAustralian Technical Advisory Group on Immunisation(ATAGI)の会合が開かれ、アストラゼネカ製ワクチンの接種適用年齢を50歳以上から60歳以上に変更する事を推奨する旨が決まり、発表されました。
オーストラリア連邦政府はこのATAGIからの勧告を受け入れ、50歳から59歳までの年齢層に該当する人はファイザー製ワクチンの接種が推奨及び適用され、アストラゼネカ製ワクチン接種は60歳以上の方に限定される事となる。
これは、アストラゼネカ製ワクチン接種による血栓症の発症が50代でも発生し、40代及び50代の女性各1人の死亡事案が発生している事に起因しております。
このような実際にワクチンを接種した事から発生する要因と共に、ワクチン接種の遅延の一つの要因として、オーストラリア国内での感染者を抑え込んでいる事により、「ワクチン接種をしなくても大丈夫では?」と考えられ、ワクチン接種希望者の減少が発生しているのでは無いかとの危惧もあります。
ただし、現在ニューサウスウェールズ州で発生しているデルタ株の拡散による再度のロックダウン措置を受け、オーストラリア国内でもワクチンを接種しないとこのパンデミックはいつまで経っても終わらないのでは?という世論の傾倒が想定され、またオーストラリア連邦政府よりファイザー製ワクチンの供給増加の見込みが発表され、ワクチン接種のスピードアップに大きな期待が寄せられています。
また、オーストラリア連邦政府は、若年層向けの新型コロナウイルスに対する注意喚起及びワクチン接種推奨のCMを作成、その衝撃的なCM映像は賛否両論の議論を巻き起こしていますが、それぐらい過激なものの方が世間一般への浸透力が高いとの意見が声高に叫ばれております。
オーストラリアにおける新型コロナウイルスのワクチンの種類
オーストラリアにおける新型コロナウイルスのワクチンは、医薬品規制当局である薬品・医薬品行政局(TGA)が、新型コロナウイルス・ワクチン候補を厳格な基準で検査し、承認作業を行っております。
2021年7月現在、オーストラリアで承認されている新型コロナウイルスのワクチンは、
- Pfizer/BioNTech(米製薬大手ファイザーと独ビオンテックの共同開発ワクチン)
- University of Oxford/AstraZeneca(英オックスフォード大学と英製薬大手アストラゼネカの共同開発ワクチン)
となっています。
先述のアストラゼネカ製ワクチンの血栓問題により、現時点でアストラゼネカ製ワクチンに関しては、60歳以上の方にのみ推奨されておりますが、オーストラリア連邦政府はワクチン接種をより広範に促すため、60歳未満の年齢層も選択次第ではアストラゼネカ製ワクチンを接種出来る旨の発表を行いました。
ただし、これは各州政府の反発を招き、現時点では各州政府によってその対応は別れております。デルタ株蔓延が拡大しているニューサウスウェールズ州では40歳以上の州民の誰もがアストラゼネカ製ワクチンのワクチンを受けられるようになり、ワクチン接種のスピードアップを図っております。
オーストラリアにおける新型コロナウイルスのワクチン接種の体験レポート
筆者が在住しているゴールドコーストのあるクイーンズランド州では、7月現在で40歳以上の住民はワクチン接種が可能となっており、Queensland Health(クイーンズランド州保健局)のホームページよりワクチン接種の予約が可能です。
46歳の筆者は、ファイザー製ワクチンの接種対象となりますが、今回2021年7月15日に受けたファイザー製ワクチン1回目接種の当日の様子をレポート致します。
- ワクチン接種の日時: 2021年7月15日 13時15分予約
- ワクチン接種の場所: ゴールドコースト大学病院(Gold Coast University Hospital)
オーストラリアにおける新型コロナウイルスのワクチン接種後の副反応
本稿執筆はワクチン接種の約22時間後ですが、発熱や体調不良などの大きな副反応は発生していません。
ワクチン接種から約3-4時間は全く何の副反応もありませんでしたが、夕方付近にワクチン接種を行った左腕の上腕部に軽い鈍痛、ずっとやってなかった腕立て伏せを久し振りに行った次の日のような筋肉痛は感じ始めました。また、接種部分付近を右手で押すと軽い痛みを感じますが、一般生活に何の不自由も感じません。
副反応は人それぞれだとは思いますが、「46最男性、大きな病歴等無し、体調万全、健康体」、今のところ大きな副反応は発生しておりません。
【2021年7月19日更新】
ワクチン接種を受けた左上腕部の筋肉痛のような鈍痛ですが、約2日で収まり、土曜日(接種日: 木曜日)にはほとんど痛みは感じなくなりました。
本情報の注意事項
掲載されている情報は執筆時のものです。特に新型コロナウィルスの感染状況や水際対策に関しては、日々その感染人数、手続き、対策は変化していますので、現在の状況と異なっている場合もあります。
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